甘い媚薬はPoison
彼はお喋りではないし、空気を読んでいろいろ察してくれる。
今は自分の姿を気にする余裕もない。
昨夜のことで頭がいっぱいだった。
蓮くんと顔を合わせるのが……怖い。
心が重いせいか、身体も怠く感じる。
動くのがつらくなってきた。
在庫の整理を終えて席に戻ると、杏奈さんが出勤していた。
「おはようございます」
私が挨拶すると、杏奈さんは私を一目見るなり腰に巻いていた黒のカーデをほどいて私の肩にかける。
「なにがあったか知らないけど、そんな憔悴しきった顔して昨日と同じ物着てたらみんな心配するわよ」
ああ……言われてみれば同じだった……かも。
自分の服をぼんやりした目で眺めるが、他人事のように感じた。
「……すみません。昨日飲みすぎちゃって……。カーデありがとうございます」
とりあえず杏奈さんに礼を言って席に座る。
そのままパソコン画面をただじっと見つめていたら、杏奈さんにポンと肩を叩かれた。
「あんた大丈夫?」
「ん?あっ……なんでしたっけ?」
「……これは重症だわ」
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