甘い媚薬はPoison
私を厄介者扱いする蓮くんだ。
きっと媚薬の効果が切れたのだろう。
「これは社長命令だ」
蓮くんが厳しい目で私を見る。
冷淡なその声には、昨夜の親密さを感じさせるものは何もない。
まるで蓮くんと抱き合ったのが幻であるかのように……。
昨夜のことも彼は忘れてしまったんだろうか?
そう思うと、何とも言えない気持ちになって涙が込み上げてきた。
ここで泣くな、愛梨。堪えろ。
「横暴過ぎます!」
私は声を荒げると、キッと蓮くんを睨みつけた。
「横暴で結構。他の社員に風邪を移されても困る。早く帰れ」
面倒くさそうに告げると、話は終わりだと言わんばかりに蓮くんは踵を返して社長室に戻ろうとする。
離れていく蓮くんと私の距離。
彼の背中が小さくなっていく。手を伸ばしても彼には届かない。これが現実。
媚薬がなければ……私達の関係なんてドライなもの。
胸が苦しかった。
目の前が真っ暗になって身体がふらつく。
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