甘い媚薬はPoison
「岸本?」
杏奈さんの声が聞こえたが、もう彼女の顔を見ることは出来なかった。
闇が迫って来て、パックリと私を飲み込む。
その時、「愛梨!」っと叫ぶ蓮くんの声が聞こえたような気がした。
私の記憶があるのはそこまで……。
気づいた時には自分の部屋のベッドで寝ていた。


懐かしい夢を見た。
私が中学生の頃の夢……。
『……いらない』
私は母に向かって力なく頭を振る。
母が作ったお粥を見ても、喉を通りそうになかった。
『困ったわねえ。食べてお薬飲まないと熱下がらないわよ』
お粥に手をつけない私を見て、母は悩ましげに首を傾げる。
『……食欲ない』
高熱で苦しくて口で息をしながら言葉を吐き出す。
その時、コンコンというノックの音がして母が返事をすると、学生服姿の蓮くんが現れコンビニ袋を私に見せた。
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