甘い媚薬はPoison
『蓮くん、お帰り。……それなに?』
朦朧とした頭で私は蓮くんに聞く。
『お前の大好きなプリン。食べるだろ?』
言い方は素っ気なかったけど、彼はプリンを袋から取り出すと、開封して私の口まで運ぶ。
『ほら』
蓮くんに言われるまま口を開けてプリンを口にする。
カスタードの甘さが口に広がり、もっと欲しいと感じた。
ツルンとしていて喉越しもいい。
『どうだ?』
蓮くんは気遣わしげに私の顔を覗き込む。
『……美味しい』
私がそう答えると、蓮くんは少しホッとしたのか頬を緩めた。
『だったらもっと食え。食欲なくて食べてないんだろ?』
蓮くんはひなにエサを与える親鳥のように、甲斐甲斐しく私の口にプリンを運ぶ。
その様子を見ていた母が、突然フフッと笑みをこぼした。
『やっぱり愛梨のことは、私よりも蓮くんが一番わかってるわね』
楽しげに呟いて、母はそっと私の部屋を出ていく。
私がプリンを完食すると、蓮くんはすかさず薬を手に取った。
『薬、ちゃんと飲めよ』
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