甘い媚薬はPoison
ああ……夢だったんだ。
当たり前の日常だったけど、今思えば幸せな時間だった。
普段は憎たらしいが、蓮くんのさりげない優しさに胸がキュンとなって……。
もうあの時間は戻らない。
それにしても、いつ自分の家に帰って来たのだろう?
蓮くんに噛み付いて……その後の記憶が全くない。
彼の言う通り、熱があるのか身体が怠い。
蓮くんはいつだって正しい。それは自分でもわかってはいたけど、あの時は胸が苦しくて認めたくなかった。
体温計なんてなくても、蓮くんは私に触れるだけで熱があるかわかる。
ジーッと白い天井を眺めていると、ガチャッとドアが開く音がした。
「あら、起きてたの?」
母が部屋に入ってきて、テーブルの上に水を置く。
「今、起きた」
私は肩で息をしながら、母に目を向けた。
「ビックリしたわよ。まだ朝なのに蓮くんがグッタリしてる愛梨を連れて帰ってくるんだもの」
「蓮くんが……?」
てっきり杏奈さんが連れて帰ってくれたのかと思った。蓮くんだって彼女に頼んでたし……。
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