甘い媚薬はPoison
「刺されないようにって……。物騒なこと言わないで下さいよ、杏奈さん」
ハハッと私は苦笑する。
「本気で忠告してあげてるの。朝比奈さんがあんた送ってくって言った時の佐藤の顔、般若の面みたいだったわよ。女の嫉妬は厄介だから、用心しなさい」
用心するって言っても、どうすればいいの?
う~んとひとり考え込んでいると、児玉くんが私の席の前を通りかかった。
「岸本さん、もう体調いいの?」
足を止めて私に声をかける児玉君に、笑顔を作って返した。
「うん。心配かけちゃってごめんね」
「朝比奈さんと岸本さんって……その……」
児玉くんが躊躇いがちに蓮くんとの関係を聞いてくる。
社長が私を送っていったから、ビックリしたのだろう。
そういえば、彼は私と蓮くんの関係を知らないか。
「幼馴染みでね。うちで一緒に暮らしてた時期もあったんだ。お兄ちゃん……みたいな感じかな」
自分で児玉くんに説明してて悲しくなった。でも……どうあがいてもそれが現実だ。
「あっ……なるほど。それで金曜日に岸本さんを送ったのかあ。それに岸本さん、いつも社長室に突撃してくもんね」
児玉くんがなぜかホッとしたような顔になる。
「うん。蓮……朝比奈さんにしてみれば、私は手のかかる妹って感じなんだよ」
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