甘い媚薬はPoison
「だったら諦めちゃダメだよ。愛梨ちゃんには元気で笑ってて欲しい。朝比奈も今の愛梨ちゃん見たら心配するよ。今日だって、朝比奈から愛梨ちゃんが具合悪そうなら帰らせろって指示のメールが僕に来てたからね」
杉山さんはクスッと笑ってみせる。
「……保護者みたいですよね」
私が暗い顔でそう言うと、杉山さんは優しい目で補足説明をする。
「クールなあいつが過保護になるくらい愛梨ちゃんは大事ってことだよ。もっとポジティブに考えよう、ね」
「……はい」
私に向かって微笑む杉山さんに、コクリと頷いた。
彼の言葉に少し救われた気がする。
杉山さんは慰めるように私の肩をポンと叩くと、コーヒーを持って自席に戻った。
私も席に戻ると、気を入れ直して仕事に集中した。
まずは今自分がやるべきことをやらなくては……。
金曜日休んだ分仕事が溜まっていて、定時後はずっとうちの社員の就業管理や各種申請書の処理をしていると、児玉くんが慌ただしく私の席にやって来た。
「岸本さん、申し訳ないんだけど、この資料明日のプレゼンで使うから十部コピー取って俺の机に置いておいてくれる?急に営業さんに頼まれて客先に行くことになってさ。打合せの後は飲むみたいで……」
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