甘い媚薬はPoison
ここで一晩過ごしたとして、誰かが明日ドアを開けてくれる保証なんてない。
「私……このままだと死ぬかも」
次に誰かここに来た時は、干からびてミイラになってたりして……。
最悪な事態が頭を過り、顔からサーッと血の気が引いていく。
頭の中はパニックだ。
「誰か~、助けて!」
お願いだから誰か気づいてよ。
力一杯ドアを叩いて、声の限り叫ぶ。
手が腫れ上がるまで……声がかれるまで何度も何度も助けを求めたが、誰も来なかった。
「……なんで……なんて……誰も来てくれないの」
嗚咽を漏らしながら、半狂乱でドアを叩き続けた。
誰かここから出してよ。
疲れてドアにもたれかかれば、聞こえるのはゼーハーという自分の息遣いと、カチカチっと時を刻む腕時計の音。
「……蓮くんに媚薬を使ったバチが当たったのかな」
ハハッと乾いた笑いが口からもれた。
床や壁はコンクリートだし、身体が段々冷たくなってくる。
突然、カタンと物音がして、ゾクッと震えた。
「なに……今の音?」
耳をそばだてながら、黙って自分の身体を抱く。
だが、なにも起こらなかった。
< 59 / 124 >

この作品をシェア

pagetop