甘い媚薬はPoison
暗闇にいるだけでこんなに怖い。
せめて窓があったら良かったのに……。
喉はカラカラで痛いし、ここは寒いし、早くここを出たい。
ひとりでいると不安で、気がおかしくなりそうだった。
おまけにパニックになっているせいか息苦しくなってきて……。
落ち着け、愛梨。
マイナスなことは考えるな。もっと楽観的に考えるのよ。
「……山で遭難するよりはマシなはず。雨風は凌げるもん。それにビルの中に人はいる」
大丈夫、大丈夫。
明日になればきっと誰かが気づいてくれる。
蓮くんだって明日は会社に出社予定だったはず……。
「きっと大丈夫。私は助かる」
自分を励ますようにそう呟くと、私は心の中で祈り続けた。
“蓮くん、助けに来て”と――。


また蓮くんの夢を見ているのだろうか?
床にずっと座り込んでいたら、彼の声が聞こえた。
「……愛梨、……愛梨、大丈夫か?」
光が差し込むのを感じ、目をしばたきながら目を開けると、蓮くんの顔のアップが目に飛び込んでくる。
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