甘い媚薬はPoison
「兄貴が夜の零時過ぎに帰ってきたと思ったら、おばさんから愛梨ちゃんがまだ帰ってないって連絡があって、血相変えて出てって……。一時間くらいして兄貴が愛梨ちゃん抱き抱えて帰ってきてさ、愛梨ちゃんは眠ってたよ」
お母さんが蓮くんに連絡してくれたのか……。
深夜になってもなにも連絡なければそりゃあ心配するよね。
ひとり暮らしじゃなくて良かった。
「そうだったんだ。でも……蓮くん、なんでうちに送らず、ここに私を連れてきたんだろう?」
「兄貴も出張から帰ってきて疲れてたしね。それに……愛梨ちゃんをそばに置いておきたかったからじゃないかな?」
「それはないよ」
私は頭を振って即座に否定した。
単に疲れてて私の家まで送る気力がなかっただけだろう。
「そんなネガティブなの愛梨ちゃんらしくない。先週の木曜、上手くいかなかったの?」
一番聞かれたくない話に触れられ、ギクッとする。
「……答えなきゃダメ?」
媚薬使って蓮くんと寝たなんて歩くんには言えない。
罪悪感で一杯なのに、蓮くんを諦めきれなくて……。
涙目で聞き返す私を見て、歩くんが優しい声で聞いてくる。
「どうしてそこで泣きそうになってるの?」
「だって……やっぱり私じゃ無理なんだよ」
私は唇をギュッと噛みながら彼に弱音を吐いた。
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