甘い媚薬はPoison
うわっ、にがっ!マッズーイ。
無理無理。このジョッキ飲み干すなんて拷問だよ。
「岸本、なにを休んでるの?もっと飲め~!」
杏奈さんが私をスーッと見据えて絡んでくる。
こんなのついてけない。
ふたりの勢いに気圧された私は、このテーブルについたことを深く後悔した。
「ちょっと私……トイレに」
遠慮がちに言って立ち上がると、チラリと蓮くんに目をやった。
女の子達が話しかけていて、彼も笑顔で返している。
クールで笑わないんじゃなかったの?
そんな笑顔、私には見せてくれたことない。
佐藤さんがいなくなっても、グズグズしてたら他の女の子に彼を取られる!
ビールを口にしたせいだろうか。
頭にカーッと血が上る。
トイレに入ると、鏡の前に立った。
媚薬は使わないって決めたけど……蓮くんを失うのだけはやっぱり嫌だ!
歩くんだって何も考えずに蓮くんに飛び込めって言ったじゃない。
迷うな。香水を使え。
私の中の悪魔が囁く。それは、甘い誘惑。
化粧ポーチから香水を取り出す。
これを使えば、蓮くんはしばらくは私のもの。
でも、そんなズルい手をまた使っていいの?
彼の意に反したことをして、後悔しない?
ううん、後悔するに決まってる。
この香水は、使っちゃいけない。
そう思ってポーチにしまおうとしたが、誤って香水が服にかかった。
< 74 / 124 >

この作品をシェア

pagetop