甘い媚薬はPoison
「あっ、マズい」
甘い香りをスーッと吸い込むと、身体が熱くなって頬が紅潮してきた。
どうしよう。服をここで洗うわけにはいかない。
あ~、なにをやってるんだろう私。
蓮くんに会う前に、ここを出なきゃ。
香水の力で彼を手に入れたって虚しいだけだ。
もうそれは過去の経験からわかってる。
絶対に彼と顔を合わせてはいけない。
香水をポーチにしまいトイレを出ると、杉山さんがこちらにやって来て、私に気づき声をかけた。
「あれっ、愛梨ちゃん、どうしたの?」
「ちょっと……酔いを冷ましてるんです。ビールは苦手なんだけど断れなくて」
ハハッと笑って返したら、杉山さんは優しい言葉をかけてくる。
「そうなんだ。だったら、僕達のテーブルにくればいいのに」
「いえ、お構いなく」
ニコッとして断る私に彼が近づいてくる。
「蓮もさあ、ずっと女の子達に捕まって、イライラしてるのかこめかみがピクピク動いてて見てると面白いって……ん?なんか愛梨ちゃんから凄くいい匂いがする」
杉山さんの顔が至近距離まで近づいてきて、私は壁に背中を貼り付けた。
杉山さん……近いです‼
「愛梨ちゃんって可愛いよね」
突然、杉山さんが壁にドンと両手をついて、私を閉じ込める。
……逃げ場がない。
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