甘い媚薬はPoison
「杉山さん、ダメ~‼」
杉山さんが身を屈めて、顔を近づける。
彼の唇が迫ってきて私はなす術もなく、ギュッと目を閉じた。
ああ~、もうダメ‼
「杉山、正気に戻れ!」
蓮くんの声がして目を開けると、彼は杉山さんの襟ぐりをつかんで私から引き剥がし、杉山さんに頭突きを食らわせた。
蓮くんがかけていたメガネがその衝撃で吹っ飛び、床に転がる。
「いってえ~」
呻き声を上げながら杉山さんがよろめくが、そんな彼を観察するように見ていた蓮くんはしれっとした顔で言った。
「杉山、お前飲みすぎじゃないか?」
「……ん?ああ……そうかも。なにしようとしてたんだっけ?」
頭を押さえながら杉山さんは自問自答している。
「トイレ行くってお前は言ってたけど」
蓮くんは落ちたメガネをかけると、杉山さんから私を隠すように前に立って、トイレの方を顎でクイッと示す。
「ああ、そっか……。壁にでもぶつかったのかな?頭が痛い」
杉山さんはどこか覚束ない足取りでトイレに向かう。
どうやらさっき私にキスしようとしたことは覚えていないらしい。
「気を付けろよ、杉山」
< 77 / 124 >

この作品をシェア

pagetop