甘い媚薬はPoison
「どうして俺に媚薬が効かないのか知りたくないのか?」
「知ってなにが変わるの?蓮くんは私のことなんて……好きじゃないくせに!」
自分の感情を蓮くんにぶつけると、突然彼の胸に引き寄せられた。
「俺はそんなこと言った覚えはない。落ち着けよ」
ズボンのポケットからハンカチを取り出すと、蓮くんは私の頬を拭う。
「だって……」
今まで『好き』って言っても、全然相手にもしなかったじゃない。
泣きじゃくる私の背中を蓮くんが撫でる。
出来れば彼の腕から逃れてすぐに家に帰りたかった。
こんな無様な姿……さらしたくないのに……。
「帰るぞ」
私が落ち着いてくると、蓮くんは私の手を掴んで店を出る。
「……帰るってどこに?」
「うちに決まってる」
蓮くんは手を上げてタクシーを止めると、私を先に乗せ、自分も後から乗り込んだ。
「六本木まで」
タクシーの運転手にそう告げると、蓮くんは私が逃げないように手を強く握ってくる。
タクシーの中ではお互い無言だった。
頭の中はごちゃごちゃ。
なんで蓮くんの家で媚薬が効かない理由を聞かなきゃいけないの!
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