甘い媚薬はPoison
『蓮くんと歩くんはずっと私の家族だからね』
屈託なく笑う彼女。
昔はよちよち歩きで転びながら俺の後をついて来てたのに、いつの間に成長したんだか。
その頃はまだ女として意識はしていなかったが、俺にとって大事な存在で……命に代えてもこいつは守ろうと心に誓った。
愛梨を好きだと自覚したのは彼女が大学生の時。
その頃には俺達兄弟は彼女の家を出ていた。愛梨の家はおじさんが大企業の専務で割りと裕福だったが、ずっと甘えて暮らすわけにはいかないと考え、大学卒業後に杉山と会社を起こすと歩を連れて自立。
歩を無事に大学卒業させたら、俺達兄弟を見捨てた奴らを見返してやろうと寝る間も惜しんでソフトを開発し、がむしゃらに働いた。
だが、おじさん達と縁が切れることはなく、彼女の家に行くこともしばしばあった。
その日はおばさんに食事に呼ばれて愛梨の家に向かうと、家の近くでカップルが抱き合っていて……。
『愛梨……?』
女性の方が愛梨と気づいた時は、思わず足を止めてしまった。
相手の男性は背が俺くらいで茶髪。
ふたりを見てシスコンの兄のようになんだかイライラした。
“その汚い手で愛梨に触れるな。”
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