甘い媚薬はPoison
そのことがあってから、自分の幸せについて……未来について考えるようになった。
彼女と暮らす新しい家を持つことも最初考えたが、頭に思い浮かぶのは自分が生まれ育ったあの家。
隣には愛梨が住んでて、俺達兄弟と三人で互いの家を行き来しながら遊んだ。そんな俺達を互いの両親が温かく見守ってくれていて……。
あの家は幸せな思い出が詰まっている場所。
今は人手に渡っているが、取り戻せないだろうか？
もう両親はいないけど、また愛梨と……おじさん達と幸せに暮らしたい。
そんな考えを思い付いてから、俺はコネを使って不動産業者に依頼し、自分の家をなんとか取り戻した。
愛梨と付き合ってもいないのに家を持つことを考えるなんて早計じゃないかと人は思うかもしれないが、俺にしてみれば早くはない。
愛梨とおじさん達の将来を考えてずっと前からお金も貯めていたし、彼女と一緒に住むのはごく自然のことに感じていた。
自分から彼女の家を出て離れたものの、今の生活には違和感があったんだ。
金はあっても幸せなんて感じなかった。
愛梨の笑い声が聞こえない。今のマンションはただ寝る場所くらいにしか思えない。
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