甘い媚薬はPoison
愛梨をうちに泊めれば、彼女を強引に自分のものにしてしまいそうで怖かった。
まだ理性があるうちに愛梨を自宅に帰らせようとタクシーを呼ぼうとしたが、彼女にスマホを奪われた。
「タクシーを呼んでやるから家に帰れ」
「帰らない!」
子供のように愛梨は駄々をこねると、驚いたことに俺のスマホを自分の胸元に隠す。
「お前……なにを⁉」
「スマホは私のブラの中だよ。私の服を脱がして奪えばいいじゃない?」
「ふざけるのはやめろ」と言っても彼女は聞かない。
「ふざけてなんかいない。私は本気よ!」
愛梨は俺をソファに押し倒して上に乗っかってきて、俺のシャツのボタンを外し始めた。
微かに香る薔薇の香りに一瞬気を取られたが、すぐに愛梨の手元が気になって香りのことはすぐに忘れた。
愛梨は上手くボタンを外せないのか、目に涙を溜めながら唇を噛み締める。
多分、愛梨なりに俺を誘惑したくて必死なのだろう。
俺はすでにお前に夢中なのになにをやってるんだ。
「お前……ホントに馬鹿だな」
溜め息混じりの声で言うと、愛梨は涙腺が崩壊したかのように涙を流し、俺のシャツを濡らす。
「泣くな」
努めて優しい声で囁いて、愛梨を自分の胸に抱き寄せ、撫でるように彼女の頭を軽く叩く。
こんな風に互いの体温を感じるほど密着するなんて久しぶりだった。
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