未来(あした)が来るなら、ずっとそばで笑ってて。
プロローグ
俺は頬杖をついたまま、いつの間にか居眠りをしていたらしい。
気が付いた直後は、それまで見ていた夢と今の現実がうまく繋がらなくて困惑してしまったが。
徐々に思考が元に戻ってくる。
古ぼけた机、聴診器、書きかけのカルテ……。
自分の周りにあるこれらの物も俺を現実に引き戻すのに役立った。
そして何よりも、自分自身があれから重ねた年月の重みが。
「……そうだよな。あの続きが今あるわけないよな」
そう、自分に言い聞かせるように呟いて窓の外を見た。
そこから見える景色は、今まで夢の中で見ていた日本のそれとは似ても似つかない。
黄色い砂埃が立ち、日干し煉瓦で造られた平らな屋根の家々と乾燥に強い植物が立ち並ぶ異国の街。
その街のあちらこちらに乗り捨てられたジープや戦車など。
長く続いた戦争の傷痕が残っている。