未来(あした)が来るなら、ずっとそばで笑ってて。



中央病院の7階でエレベーターが止まり、俺と母は消毒液や薬の匂いの籠もった病棟に足を踏み入れた。


案内図では単に7階病棟としか記されていないが、実のところ、癌の患者の為の専用病棟なのだ。


だから、この病棟の廊下やリクリエーションルームにいる入院患者たちは皆一様に色が白く痩せていて、帽子を目深にかぶっている。

全員、抗癌剤の副作用で髪が抜け落ちてしまっているのだ。


咲雪もあんなふうになるのだろうか。




俺と母はナースステーションの前を横切り、廊下の一番奥の部屋の前で立ち止まった。


701と書かれた、エレベーターのドアを連想させる分厚い金属の扉。


扉の外においてある消毒液で手を消毒してから、扉の取っ手を掴んだ。

半自動の為、ちょっと引っ張ると後は自動でスライドする。


俺と母は滑り込むようにその病室に入る。

細長い病室の一番奥には無菌状態に保たれているベッドがあり、そのベッド上に咲雪は横たわっていた。

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