未来(あした)が来るなら、ずっとそばで笑ってて。
咲雪は、泣き出しそうになるのを懸命に堪えながら、一語一語搾り出すように答えた。
「……だって、あたし、死ぬかもしれないんだよ。簡単に治る病気だったら、悠聖と別れたりしないよ。
……あたし、まだ悠聖のこと大好きなんだから。
でも、そうじゃないもん。あたし、悠聖の重荷になりたくない」
そう言って、咲雪はワッと泣き崩れた。
咲雪の気持ちを思いやると、俺も辛くて、もらい泣きしそうになる。
咲雪はこの決定をするのに何度も躊躇ったに違いない。
何度も別れようと決めては思い直し、別れようと決めては思い直し。
泣きながら別れることを決めて、あのメールを送ったんだろう。
俺は、せめて泣きじゃくる咲雪の背中を撫でてやりたいと思ったが、無菌室の仕切りに阻まれてそれをすることは出来なかった。
「……お願い、お兄ちゃん。悠聖には、あたしが絵の勉強をする為に外国に留学したって伝えて欲しいの。
悠聖と別れるのが辛くて、結局最後まで言い出せなかったって」