未来(あした)が来るなら、ずっとそばで笑ってて。

「わかった。わかったよ」


泣きながら懇願する咲雪に対して、俺はただわかったと言うことしか出来ない。


母も黙り込み、狭い病室には咲雪の嗚咽だけが聞こえていた。








俺が病院を出た時にはだいぶ夜も更けていた。


昼間はそうでもないが、夜になるとやっぱり冷える。


白く曇った自分の息を見ながら、もう秋も終わりに近いんだということをしみじみと実感していた。



咲雪の付き添いで病室に残っている母。


その為、母の車で病院に来た俺は当然電車で帰らざるをえなくなって、最寄の駅まで夜の街を歩いていた。



ふいに思い出して、病院内では電源を切っていた自分のスマホの電源を入れる。


すると、待ってましたとばかりに電話が鳴り始めた。

ディスプレイを見ると、思ったとおり悠聖だ。



悠聖は、一体何回俺に電話をかけたんだろう?


奴の気持ちを思うと胸が痛くなるが、俺はこれから親友に対して大嘘をつかなければならない。

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