未来(あした)が来るなら、ずっとそばで笑ってて。

「……あれ?」


もう一度目をつぶってみた。

……暗い。


もう一度目を開くと、悠聖の姿がさっきよりもはっきりと見える。



「……おかしい、……目がさめない。
目がさめなくちゃ……いけないのに……夢が終わらない」


あたしがそう悠聖に言うと、悠聖はビニールの仕切りから手を入れてあたしの手をそっと握ってくれた。


「咲雪、俺は夢じゃないよ。その証拠に、ちゃんと触れるだろ?」


彼の言うとおり、あたしの手には彼の手からの温もりと脈動が伝わってくる。



「え?……え?」


何がなんだかわからない。悠聖は夢の中にしか出てこないはずだ。

夢から抜け出すなんて出来るわけがない。



「咲雪、俺がわからないのか?」


不安そうに尋ねてくる悠聖に、あたしは力を振り絞って首を横に振った。


悠聖のことがわからないわけがない。
でも、本物の悠聖がここにいるわけがない。

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