未来(あした)が来るなら、ずっとそばで笑ってて。

「……咲雪が言いたいことはなんとなくわかる。
……でも、咲雪の為に沢山の人がくれた血を無駄にしないためにも、なおのこと咲雪は治らなくちゃいけないよな」


あ、ちょっといい感じにまとまった?



「わかってる。その人たちに感謝してる気持ちを示すためにもあたしは元気になるからね」


そう言って、微笑みを浮かべる咲雪。

俺も、咲雪を安心させる為に笑って見せた。



でも、俺の内心は複雑だった。


一回目の抗癌剤の投与が終わってすでに3週間。


本来なら、今頃は咲雪の骨髄から造り出された新しい血液細胞が増えて、その本来の役目を果たす。

そして、咲雪は輸血に頼らなくても十分に自分に必要な血液をまかなえるはずだった。



でも、抗癌剤の投与から一週間目の時の検査で。

咲雪の骨髄が新たに造り出した血液細胞のほとんどが骨髄芽球、つまり正常な細胞になりきれなかった未熟な白血球であることが確認された。

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