未来(あした)が来るなら、ずっとそばで笑ってて。

俺が思わず尋ねると、咲雪は首を横に振って嬉しそうに笑った。


「……あたしって幸せだなーって思ったの。あたし、本当にお兄ちゃんがあたしのお兄ちゃんで良かった」


「……馬鹿」



そんなことを真面目に言われたら照れてしまう。


すると咲雪も、自分の言ったことが恥ずかしくなったのか真っ赤になって布団で顔を隠してしまった。


咲雪が小さくあくびをする。



「……なんか、久しぶりに長くしゃべったら疲れちゃった。ちょっと寝るね」


「ああ。無理しないでゆっくり休みな。
……ここにピアノがあれば子守唄ぐらい弾いてやれるんだけどな」


俺が冗談半分でそう言うと、咲雪は真面目な顔で頷く。



「……うん。次はピアノ、ちゃんと持ってきてね。おやすみ……」


「え?」


咲雪は目を閉じてすぐにすやすやと寝息を立て始めた。



しまったと後悔したがもう遅い。


俺は家からあの重たい電子ピアノを持ってこなければならなくなってしまった。

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