未来(あした)が来るなら、ずっとそばで笑ってて。

「まいったな」


ぼやきながら咲雪の寝顔をながめた。


起きている時は気が張っているせいかあまり気付かなかったが、眠っている咲雪の顔はだいぶやつれてしまっている。


無理もない。

咲雪は、昼夜関係無しにずっと一人でこの病気と闘っているのだから。



俺は、明日にも咲雪の為にここにピアノを持って来ようと決意した。


たかがピアノを持って来て弾くことぐらい、そんな大したことじゃない。


咲雪のピアノを聞きたいというぐらいのささやかな願いなら、いくらでも叶えてやろうじゃないか。



考えたくはないが、咲雪にはあまり時間が残されていないのかもしれないのだから。


俺には、咲雪を励ますことしかできない。


だからせめて、少しでも咲雪の為になるのなら骨惜しみせずにしてやりたい。



俺が咲雪の為にしてやれることはそれだけしかないのだから。


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