未来(あした)が来るなら、ずっとそばで笑ってて。
人通りの無い廊下に俺達の足音が妙に大きく響く。
窓も無く、灯りといえば白い蛍光灯だけなのでやけに寒々としていて、俺は思わず身震いをした。
人の気配がない。
いや、ここには生きているものは俺達以外にはいない。
俺は病院の地下に入った時からずっとその事を肌で感じていた。
事実、数分前にエレベーターから出てからこっちで誰ともすれ違っていない。
看護師の浜木さんが押すストレッチャーの上に横たわって俺を見上げてくる咲雪。
マスクをしているので表情まではよくわからないが、目が不安げに揺れているのを俺は見て取った。
咲雪も、この雰囲気を感じ取って怯えているのかもしれない。
咲雪のそんな様子を見るだけで、俺は胸が締め付けられるような気がした。
何か、彼女の為にしてやりたい。
その思いに動かされて、俺は咲雪の手を取った。
震えている……。
「咲雪、体は大丈夫か?」