未来(あした)が来るなら、ずっとそばで笑ってて。



放射線の照射が終わった後、咲雪は再び7階の無菌室に戻された。



無菌室は、ベッドの周りをぐるりと囲むようにビニールで区切られて設けられている。


その無菌室の中には常に浄化されたきれいな空気が流れ込み、外側より気圧が高く保たれているので汚れた空気が絶対に流れ込まないようになっている。



抗癌剤治療で白血球の数が激減した時もそうだった。

だが、放射線で骨髄や白血球が壊された今の咲雪には免疫というものがほとんど存在しない。


ということは空気中に普通に漂うカビやバクテリアやウイルスにさえ、咲雪は満足に抵抗することが出来ないということだ。



もし、咲雪が無菌室に入らなかったらたちまちのうちに咲雪の体は病原菌に乗っ取られてしまうだろう。


咲雪は骨髄移植を受けて、体の免疫機能が回復するまでは無菌室を出ることは許されない。


当然、俺らもビニールの仕切りの外までしか行くことは出来ないが。

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