未来(あした)が来るなら、ずっとそばで笑ってて。
ピアノの音が聴こえる。
静かで優しく、聴いた覚えのある懐かしい旋律。
そして、そのピアノの音に調和して誰かの歌う声も聴こえる。
聴いていて温かくなるような優しいアルト。
誰が歌っているの?
完成した芸術作品にも似たその演奏に誘われて、あたしはゆっくりと目を開けた。
思いのほか明るかったので、あたしは目を細めて目が慣れるのを待った。
もうすっかり見慣れた、ビニールで囲まれた無菌ベッド。
あたしの枕元には、お兄ちゃんに頼んで家から持ってきてもらったあたしのスケッチブックが置いてあった。
仕切りのビニールの外側からお母さんが描いてくれたイラストが何枚か貼ってある。
お母さんが仕事の合間に描いてくれたものだ。
そして、仕切りのビニールの向こうに、悠聖とお兄ちゃんと央子ネエと茉優がいた。
お兄ちゃんが家から持ってきた電子ピアノをボリュームを絞って弾いていて、央子ネエがパイプ椅子に座ったまま歌っている。