未来(あした)が来るなら、ずっとそばで笑ってて。
「……それじゃ、また来るからね」
「……仕事、忙しいのね」
名残惜しそうに立ち上がる母に、咲雪が寂しそうに言う。
そんな咲雪に、母は申し訳なさそうに小さく頷いた。
「ごめんね。今週中に仕上げなければいけないイラストが何枚かあるのよ。
小説の挿絵を頼まれてしまって、お母さんは断りたかったんだけど、先方さんがどうしてもって言うから……」
そう言って母はもう一度「ごめんね」と謝った。
「ううん。忙しいのに会いに来てくれてありがとう。
お母さん……あたしのために無理させてごめんね。体壊さないでね」
咲雪は笑顔でそう言ったが、その笑顔はどこか硬かったように感じる。
母は、思い出したように持っていた書類鞄からA4サイズの紙を一枚取り出した。
「仕事の合間に描いていた絵が出来たから持ってきたわ。大したもんじゃないけど咲雪へのお見舞いね」
母はそれを咲雪に直接手渡すことが出来ないので、そのイラストを俺に渡してきた。