未来(あした)が来るなら、ずっとそばで笑ってて。

「ああ。別にそれでいいけど」と、言ってから思い出した。


「母さん、央子も家まで送ってくれる?」
 

夜は物騒だから央子を一人で帰すわけにはいかない。



「そんなの当たり前よ。
央子ちゃんもそれでいい?」
 

母に話を振られて央子は慌てて頷く。



「は、はい。お願いします」


「それなら、橘先生んとこ行った後でもう一回来るから、持って帰るものがあるんだったら準備しといてね」


そう言い残して母は病室を出て行った。








母の愛車は軽四の分際で驚くほど車内の居住空間が広い。


だから、後部座席に俺と央子が並んで座ってもまだ十分に余裕がある。

 

普段の電車の中でなら普通に交わせる何気ない会話も、母が前にいると妙に恥ずかしくて出てこない。


すぐ隣に好きな人が座っているのに、しゃべらないでいることは結構ストレスが溜まる。
 
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