未来(あした)が来るなら、ずっとそばで笑ってて。

俺はそっと央子の横顔を盗み見た。


見るからにしっかり者といった感じのその横顔が、反対車線を走ってきた車のヘッドライトで一瞬明るく照らし出される。



央子が俺の視線に気付き、こっちを見て、どうしたの?とでも言いたげに首を傾げた。
 

俺は、央子との間に開いている握りこぶし二つ分ぐらいのシートを軽くぽんぽんと叩いて央子に目配せした。


すると、央子はちょっと恥ずかしそうに俺のほうに詰めてくる。



「圭祐ー。親の前でいちゃつくのはNGよ。あたしはまだおばあちゃんなんて呼ばれたくないんだからね」
 

絶妙のタイミングで釘を差す母に、心臓が跳ね上がった。

母には後ろにも目があるんだろうか。


顔を上げると、ルームミラー越しに母と目が合った。
その目は笑っている。



「いちゃついてないよ」

 
そう言いながらも俺は母に見えないようにそっと央子の手を握っていた。

ひんやりとした柔らかい手が俺の手を握り返す。
 
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