未来(あした)が来るなら、ずっとそばで笑ってて。
体中を血液が一気に駆け巡る。
央子を抱きしめてキスしたいと思ったが、母の手前自制心を働かせた。
「はあ、これはダメね」
ため息混じりにそう言った母が、大きく伸びをした。
何のことかと思って車の外を見ると、いつの間にかすごい渋滞にかかってしまっていて当分動きそうにない。
「うわっ事故かな」
「かもね」
俺と央子がこそこそ言うと、母が小さく笑って言った。
「違うって、この道はこの時間いつもこんなものよ。ほら、あの橋の手前で車線が減るでしょ。それでよ」
「あ、納得」
周りの車がのろのろと進み始めた。
母も発進させたが、10メートルも行かずにまた止まる。
「これはだいぶ遅くなりそうね。央子ちゃん、家に電話しなくてもいい?」
「大丈夫です。電車だったらもっと遅くなるから」