未来(あした)が来るなら、ずっとそばで笑ってて。

「ま、勉強してないから今年は無理だろうね。でも、俺は医者になるって決めたから。だから、一浪して真面目に勉強してから来年こそ医大に入ってみせるよ。

それに……」


「それに?」 

 
あたしが聞き返すと、悠聖は言いにくそうに口の中でもごもごしている。



「いや、だからその、あれだ」


「あれだってなによ?」


「だから……」


悠聖があたしの背後のスケッチブックをちらっと横目で見てから言った。



「将来咲雪が旅をする絵描きになった時に医者がそばにいたらある程度安心だろ。
だから、まあ、それだけが動機って訳でもないけど、俺は医者になるって決めたんだ」


「嘘……」


「いや、普通にマジ」
 


悠聖が冗談を言っているのかと思ったのに。

人生の重大な決定をこんなに簡単に決めるとは思わなかった。



「なにそれ!?なんで人生の大事な決定をそんなに簡単に決めちゃうの!?」

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