未来(あした)が来るなら、ずっとそばで笑ってて。



咲雪が霊安室に移された後で、俺は悠聖の姿が見えないことに気が付いた。


病院の中を捜すと、無菌室の前の廊下に座り込んでいる悠聖。



壁にもたれかかって、ただぼんやりと向かい側の壁を見ている。



「ここにいたのか……捜してたんだ」


俺がそう言うと、悠聖は一瞬俺の方を見たが、またすぐに壁の方に目を移す。


悠聖の隣に腰を下ろしたが、悠聖は何も言わない。



「飲めよ」
 

ここに来る途中に自販機で買った缶コーヒーを差し出す。


悠聖は一応受け取ったが、手にしたそれをただぼんやりと見たままで飲もうとはしない。
 


咲雪が、最後の闘病生活を送ったこの場所は、俺たちにとってすっかり馴染み深いところとなっている。


ここのドアを開けて中に入ると、咲雪は起きていればいつも笑顔で迎えてくれた。
 
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