未来(あした)が来るなら、ずっとそばで笑ってて。
俺は、咲雪のスケッチブックを机の上に置いて、小さく伸びをしてから診療所の外に出た。
照りつける、眩しい日差しに目を細める。
すると、庭のやしの木の木陰で近所の子供達と遊んでいた小さな女の子が、俺の姿を認めて駆け寄ってくるのが視界に入った。
「パパ‼」
そう言いながら、彼女は俺にその小さな体を体当たりさせてくる。
「おお、サユキ。その小さな体のどこにそれだけのパワーがあるんだ?」
そう言いながらサユキを抱き上げて高い高いをする。
すると彼女は嬉しそうにキャッキャッと笑い声を上げた。
五歳のサユキは、内戦で親を亡くした戦災孤児で、定かではないが日系人らしい。
助手のアスランに拾われてきた時はまだ三歳で、自分の名前と歳しか言えなかった。
俺は、愛する人と同じ名前を持つ恵まれない境遇の彼女に一種の運命的な繋がりを感じて、彼女を自分の養女として引き取った。