未来(あした)が来るなら、ずっとそばで笑ってて。
「あっ。アスラン‼」
サユキの声にそちらを向くと、赤いペンキでへたくそな三日月のマークの描かれた軍用ジープから、必死の形相をしたアスランが走ってくるところだった。
「どうした?」
「……ド、ドクター!大変なんだ。タルジュの村で集団食中毒が出たんだ!
子供や老人がどんどん倒れてる‼」
砂漠の向こうのタルジュの村はアスランの故郷でもある。
「わかった!すぐ行こう」
俺はすぐに診療所の中に駆け込んで行って、栄養剤や消毒液や抗生物質などの必要と思われるものを片っ端から鞄の中に詰め込んだ。
ジープに乗り込む俺に、サユキが呟く。
「遠くに行くの?」
俺は彼女の頭を撫でてから彼女に謝った。
「ごめんな。寂しい思いをさせて。もしかしたら今夜は帰れないかもしれないけど、大丈夫か?」
「大丈夫だよ!夜になったら隣のファティマおばさんの所に行くから!」
サユキは精一杯強がりを言ってみせる。