未来(あした)が来るなら、ずっとそばで笑ってて。
単純な、それでいて心に響く短い旋律が何度か繰り返される。
それを聞いた瞬間、古い記憶が鮮明に蘇ってきた。
咲雪にせがまれて、圭祐が電子ピアノを弾き始め、央子が歌を歌い始める。
それまで一度も聞いた事が無かったのに、何故か懐かしいメロディ。
その歌詞はすごく共感できた。
その曲の正体は、演奏を終えた二人がさんざん焦らした後で教えてくれた。
『圭祐の作った曲にあたしが詞をつけたの。これは、咲雪の為にあたしと圭祐が作った歌。
曲名は……【君はいつもそばに】』
あの時と同じ曲が、小さなスピーカーから流れてくる。
日本語を理解できないアスランが呟いた。
「優しい、曲だ」
「わかるのか?」
驚いて聞き返すと、アスランは首を傾げた。
「……なんとなく」
「そうか」
俺は頷いて、圭祐のピアノと央子の声に耳を傾ける。
まさか、日本から遠く離れたこんな場所で聴けるとは思わなかった。