エリート上司の甘い誘惑
お酒、飲んだら運転できなくなる。
もうしっかり飲んでしまっているから、本当に今更の質問なのだけど。
「ああ、今日は代行でも頼むか、置いて帰る」
「あ、私まだちびっと飲んだだけなので、もし良かったら運転出来ますけども」
本当に、乾杯の後一口飲んだだけで、後はぶっちゃけお料理に夢中だった。
なので、まあ一口は飲んだけど全く影響はないしこれからウーロン茶だけにしておけば問題ない程度だと思う。
人さまの、しかも部長の車を運転するなんてものすごく緊張するけれど。
代行を頼むよりは、お食事をおごってもらったお礼にその方がいいと思ったのだ。
だけど、部長は私の案に物凄く、ものすごーく変な顔をした。
「え……私、何か変なこと言いました?」
「言った。どういうルートで帰るつもりだ?」
「どうって、部長のお家まで行って」
「そこから?」
「電車で帰ります」
当然だ。
そこから部長に送ってもらったりしたら結局飲酒運転になるのだし、これからしっかり食事を堪能した後でも、充分電車の時間はある。
「馬鹿か。そんなことさせられるか」
「ええっ、なんでですか! これでも結構、運転上手いんですよ?!」
いきなり馬鹿と罵られ若干ショックをうけ、ついムキになって言い返してしまった。
だって!
よく、運転下手そうだと言われるけれど、これでもちゃんと。
「ちゃんとゴールド免許の安全運転派です! 乗らないからゴールドとかじゃないですよ、休みの日にはちょこちょこ乗ってますし!」
「そういうことは言ってない。もういい、お前もちゃんと飲め。私が送るとか言えないようにしてやる」
もしかして、女性社員に送られるとか、そういうのが嫌なのだろうか。
なんでよ、変に同行とか頼むより絶対いいと思うし運転に男も女もないと思うけど!
早くグラスを空けろとばかりに、ビールの注ぎ口を近づけてくる。
「いえ、ほんとに。このところ、望美とか東屋くんとか、何せ飲む機会が多くてちょっと反省してるんです」