エリート上司の甘い誘惑
「努力したんですよ? これでも。なのにどうして、私は選ばれなかったのかなって。結局魅力が足りないってことなのかな。でも、自分を磨くってどうすればいいんだろうって……」
可愛いと言われたくて、努力もした。
料理が上手いと褒められれば、もっと上手くなりたいって思った。
でも園田は私を選ばなかったってことは、人の魅力ってそういう部分じゃなかったのかなって。
考えれば考えるほど、わからなくなっていた。
じゃあなんで、引く手あまたの人気者の東屋くんが、私を好きだというのだろう。
彼もいつか、誰かに心変わりするんだろうか、もっと魅力的な人を見つけたら。
私は少し、いやかなり、臆病になりつつあると頭ではわかっている。
わかっていても、どうにかできるものでもなかった。
「選ばれないからといって、魅力がないことにはならない」
部長の声はやけにきっぱりとしていて、だからまっすぐに耳に響いた。
「そのたった一人の男の審判が、全てなわけないだろう」
驚いて顔を上げると、私を見つめる真剣な視線に捕まる。
なんだかひどく、意識してしまって俯いたけど、目は離せなかった。
「……確かに、そうですけど」
「けど?」
「……やっぱり、好きな人には選んでほしいじゃないですか」
部長の言葉は、嬉しくて心に染み渡り私を少し浮上させる。
だけど、やっぱりいつかまた、恋をしたら。
好きな人に、私がいいと言われたい。
子供染みた、夢見がちな女の思考だろうか。
言葉にしてから少し恥ずかしくなって、耳が熱くなった。
そんな私を、藤堂部長は少し瞠目し見つめたまま、やがて柔らかく表情を綻ばせた。
「……お前、可愛いな」