エリート上司の甘い誘惑

思っていた通り十分前頃から人は集まり始め、開始時刻に若干遅れはあったものの藤堂部長以外が揃ったところで乾杯の合図となった。


「飲み放題の中で飲めるお酒のメニューはこれだけですよー! それ以外は個人会計でお願いします!」


アルコールメニューを回しながらおかわりなどのオーダーを聞いていたが、それも最初だけだった。
料理が順に揃い、会が盛り上がってくるとやがてそれぞれ勝手に頼み始めたから、こうなるとやっと私も東屋くんも落ち着いて食べ物にありつける。


部長、まだ来ないけど。
お料理、少し取り分けておかないと、なくなっちゃいそうだな。
少し大きめの取り皿を店員にお願いして、お料理を少しずつ取り分けていると、営業の男性陣と話していた望美が私の隣に戻ってきた。


「さよもお疲れ様」

「ありがとー」


互いにグラスを持ち上げ、カツンと鳴らす。


「東屋くん、弄られてるねー」


彼は、あっという間に女性陣に囲まれてあれやこれやと絡まれている。
その大半は冗談半分の弄りのようだけれど。


「で、どうなってるの? 最近忙しくて話聞けなかったけど」

「どうって?」

「わかってるくせにー」


にやにやと笑って私の表情を窺う望美から、逃れるように視線を逸らす。

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