エリート上司の甘い誘惑
頭の中を、クエスチョンマークが飛び交う。
当たり前って。


付き合ってた彼女が妊娠したんだから、ある意味今の状況で当たり前なわけで、そこをどうにかしたいなんて私は言ってないし思ってすらいない。


他の可能性なんてたとえ示されたってありえない。


「えー……っと」


ちょっと、理解不能で頭痛がしてきた。
蟀谷を抑えて俯く。


「……それで、園田さんは一体私と、どうしたいの」


それだけでも、解読しようとする私を優しいと思って欲しい。
だって放置するのも気持ち悪い。


園田の答えを待つ間に、私はこの数年、付き合っていた頃の園田のことを思い出していた。
恋愛フィルターを取り除かれた上で、改めて。


優しいところは、ある。
だけどわがままなところもあった。


プライドの高い負けず嫌いで、独占欲は、ピカイチ。
強引なところを、頼りがいがあると私は思ってた。


東屋くんが示した、園田の私に対する執着。


「……これからも、さよに会いたい。失いたくないんだよ」


これまで見てきた園田の性格を踏まえ、綺麗に恋愛フィルターが剥がれた上で聞いた園田のセリフは、薄ら寒いものだった。


「いや、それ。惜しくなっただけだよね?」

「は?」

「そんで私がいつまでもメソメソしてなかったのが悔しいだけでしょ」


知恵なんてなくても落ち着いて考えればわかる。
私が見るからに意気消沈しなかったのが腹立たしいんだ。


してたっつーの!
あんたに知られるのが癪だったからどうにか取り繕ってただけで!

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