エリート上司の甘い誘惑
この、あと。
ふたりで。
余りに近い耳元での甘い囁きに、酔う。
くらりと眩暈を感じて、ぎゅっと目を閉じた。
酔って、このままふらふらと誘われるままに腕の中に堕ちてしまいたくなる。
けど、一方的に酔わされてちゃだめだ。
「……私も。話が、あって」
意を決して、言葉にした。
と、ほぼ同時くらいだろうか。
慌ただしく店の扉が開く音がして、東屋くんが血相を変えて出て来た。
「……さよさん!」
座敷に園田が戻ったことで、二人同時に居なかったことに気が付いたんだろう。
心配してくれたのだと思うけど、私と部長を見て複雑な表情をした。
「藤堂部長。お疲れ様です、みんな待ってますよ」
「ああ、遅れて悪かったな」
部長の手が、東屋くんには見えない角度で一瞬、私の手を取り手のひらを撫でる。
『後で』と、約束の確認のように思えた。