エリート上司の甘い誘惑
え。
え、え。
戸惑っている間に、集まる社員たちの合間を縫って。
すぐに周囲も、部長の行動に気が付いて視線が集まる。
え、まさか。
いやいや、さらっと私の横を通過して、その後どこかで落ち合うとかそういう流れ……だよね?
だって、こんな、皆見てる目の前で。
ないない、それはない。
と、一瞬浮かんだ妄想をかき消した。
けど、部長は真っすぐ私を見たままでそして、私の目の前まで来ると。
「行くぞ、西原」
そう言って、私の手を掬い上げ、そのまま歩き出した。
え、という私の驚きは声にはならず、それより早く手を引かれ慌てて足が追いかける。
みんなの、ぽかんとした表情が私達を見ている。
東屋くんがどんな顔をしているのかは、振りむいても彼が背中を向けていてわからなかった。
それから数秒ほどのタイムラグがあった、後。
「えええええええええっ?!」
という、大合唱を背中で聞いた。