エリート上司の甘い誘惑
藤堂が恋に落ちた夜《藤堂side》
◇
別にうちの社は職場恋愛が禁止されているわけではない。
だが、こんな姿を見ると、いっそ禁止にしてしまってもいいのではないかという気持ちにもなる。
「男なんれ、ものすごく薄情な生き物らと思いまふ!」
一杯飲んでから帰るかと行きつけのバーに顔を出したら、部下が泥酔してカウンターに突っ伏していた。
大丈夫かと声をかけると視線が合うような合わないような、既に怪しい状態だった。
そのまま気を失ったように眠りかけたが背中を支えるとすぐにまた身体を起こし、カウンターに縋り付く。
それから、二杯飲んでこの状況だ。
当然止めたが、止めればなぜだ私には酒を飲む権利もないのかと騒ぎ出すのだからたまったものではない。
「ほんれ結局、都合が悪くなると逃げ出すんですよぅねぇええ?」
「そんな男ばかりでもないと思うが」
「誠実って何?!」
「……耳が痛いものだな」
西原の言葉を右から左へ受け流しつつ、目の前の馴染みのバーテンダーに同意を求める。
彼は苦笑いをして首を傾げ、答えを曖昧にした。
「ずっとこの状況か?」
「さっきまではまだ、落ち込んではいらした様子でしたけど、ここまでは。知った顔を見て安心したんじゃないですか?」
そうだろうか。
ここにいるのが自分の上司だと、わかっているかどうか怪しいものだ。
別にうちの社は職場恋愛が禁止されているわけではない。
だが、こんな姿を見ると、いっそ禁止にしてしまってもいいのではないかという気持ちにもなる。
「男なんれ、ものすごく薄情な生き物らと思いまふ!」
一杯飲んでから帰るかと行きつけのバーに顔を出したら、部下が泥酔してカウンターに突っ伏していた。
大丈夫かと声をかけると視線が合うような合わないような、既に怪しい状態だった。
そのまま気を失ったように眠りかけたが背中を支えるとすぐにまた身体を起こし、カウンターに縋り付く。
それから、二杯飲んでこの状況だ。
当然止めたが、止めればなぜだ私には酒を飲む権利もないのかと騒ぎ出すのだからたまったものではない。
「ほんれ結局、都合が悪くなると逃げ出すんですよぅねぇええ?」
「そんな男ばかりでもないと思うが」
「誠実って何?!」
「……耳が痛いものだな」
西原の言葉を右から左へ受け流しつつ、目の前の馴染みのバーテンダーに同意を求める。
彼は苦笑いをして首を傾げ、答えを曖昧にした。
「ずっとこの状況か?」
「さっきまではまだ、落ち込んではいらした様子でしたけど、ここまでは。知った顔を見て安心したんじゃないですか?」
そうだろうか。
ここにいるのが自分の上司だと、わかっているかどうか怪しいものだ。