エリート上司の甘い誘惑
披露宴後の、二次会を断った上でのこの泥酔。
男に対する愚痴と不信感。


たまたま失恋と職場の先輩の結婚式が重なった、とも考えられるが。
あの職場での空気の僅かな変化が、十中八九相手は園田だろうと思わせた。



「私のダメなところはどこれすか……」

「敢えて言うなら目が悪いんだろうな」

「視力……」

「違う」



抑々が、男を選びそこなっただけのことだろう。
なのに、自分自身に非を探そうとする辺りが気になった。


割に、先ほどから一度も園田の名前は出さない。
男の不誠実を詰る言葉も、ともすれば特定の誰かではなく『男』という生き物に対して向けられた一般論のように聞こえる。


もしも、それが別れた男を気遣ってのことならば、律儀なことだ。
しかも、泥酔した上での譫言で。


顔を伏せたまま、旋毛頭が揺れた。
居心地の良い頭の置き所を探して、身じろぎをしたようだ。



「遠慮せずに悪態つけば、少しはすっきりするだろうに」



西原は、不器用なタイプだっただろうか。
性格は明るく真面目。勤務態度もいい。


だが確かに、融通が利かなさそうな部分はある気がする。


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