エリート上司の甘い誘惑
もうすでに零れているのに、それでもまだ泣くまいと目頭に力を入れて、肌が緊張で震えていた。
膝できつく握られた小さな拳も、唇も、身体中が震えていて、余りにも痛々しい。
「……吐き出せ、全部。悪態でもなんでも聞いてやる。こんな泣かせ方をする男なんか忘れろ」
緩く首を振った。
そのことに、何か酷く苛立った。
何も、そこまで園田に義理立てすることはないだろう。
披露宴で、新郎新婦の馴れ初めを聞かされ、プロジェクターで映し出された二人の写真を見せられ、自分との時間とを脳裏で摺り合わせたことだろう。
あの二人が別れていた時期がなかったなら、当然西原とは同時進行であったはずだ。
辛くなかったはずはないものを、披露宴の間は決して顔に出さず他のゲストと同じように笑って祝福して見せた。
もしもあのバーで見つけなかったら、一人で泣くつもりだったのか。
どれだけ堪えても溢れる涙がいくつも頬に筋を作った。
噛み締めた唇が、痛々しく歪む。
「……余り噛むな」
血が出るのじゃないかと、つい指が唇に触れた。
宥めるように撫でると、ゆる、と開いた唇に不覚にも心臓が鳴った。
膝できつく握られた小さな拳も、唇も、身体中が震えていて、余りにも痛々しい。
「……吐き出せ、全部。悪態でもなんでも聞いてやる。こんな泣かせ方をする男なんか忘れろ」
緩く首を振った。
そのことに、何か酷く苛立った。
何も、そこまで園田に義理立てすることはないだろう。
披露宴で、新郎新婦の馴れ初めを聞かされ、プロジェクターで映し出された二人の写真を見せられ、自分との時間とを脳裏で摺り合わせたことだろう。
あの二人が別れていた時期がなかったなら、当然西原とは同時進行であったはずだ。
辛くなかったはずはないものを、披露宴の間は決して顔に出さず他のゲストと同じように笑って祝福して見せた。
もしもあのバーで見つけなかったら、一人で泣くつもりだったのか。
どれだけ堪えても溢れる涙がいくつも頬に筋を作った。
噛み締めた唇が、痛々しく歪む。
「……余り噛むな」
血が出るのじゃないかと、つい指が唇に触れた。
宥めるように撫でると、ゆる、と開いた唇に不覚にも心臓が鳴った。