エリート上司の甘い誘惑

ベッドに腰かけてからのキスは、泣きたくなるほど優しかった。


啄んで、少し離れて吐息を交わす。
額を合わせて、互いの呼吸を読んだ。


それからまた、互いの意思を確認するように、そっと唇を触れ合わせる。
その余りの優しさに、覚えがあった。



「……あ、」

「ん?」

「……あの夜の、キスだ」



間違いない。
そう思ったら、また自然と涙が零れた。


そんな私を慰めるようにまた、唇の柔肌が触れる。


キスの感触で思い出せるなんて、欠片も思っちゃいなかったけれど、感触、というよりも。
この空気感は確かに知っている。


弾む息、触れあう額、涙味のキス。
あの夜と同じだ。


「……泣くな」

「だって……」


確かに慰められた、温かい記憶だった。
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