エリート上司の甘い誘惑
いつまでも肌に残る、キスの記憶を消したくないと願ってた。
今この瞬間と、記憶が重なる。
それに呼応するように、彼が何度も唇で肌に囁いた言葉がぱちんぱちんと泡が弾けるように思い出される。


『……好きだ。可愛いよ』
『お前は可愛い』
『好きだよ』


私は確かに、肌で聞いていた。
彼が唇で触れた場所から、その言葉が再び染み入り肌が熱く火照る気がした。



「好きだ、さよ」



彼は私の唇に、頬に首筋に、キスを刻んでいく。
部長の手が、私のブラウスの襟元を開けさせた。
少しずつ、暴かれていく身体に落とされる視線に、居た堪れなくなってきつく目を閉じた。
目を閉じれば尚更、私の身体を撫でるその手の大きさや熱さを肌が感じ取る。



「あ、あの、部長っ……」

「ん?」

「ま、待って、少し」



脱がされる。
そう実感した途端、酷い羞恥心に襲われ怖気づいた。



「なぜ」

「は、はずか、しい……」



スカートの裾から太腿を擽る指が。
ずっと、オフィスで憧れていた人のもので、これからもずっと同じ場所で仕事をするのだ。


それが酷く恥ずかしい。
< 203 / 217 >

この作品をシェア

pagetop