エリート上司の甘い誘惑
甘いキスに祝福を




「俺は、男に向かって握り拳を振り上げる女の『大丈夫』を信じない」

「……すみません」


晴れて恋人同士となったはずの私達だが、私は今、早速説教を受けている。どうやら園田に絡まれていたあの時、拳を振り上げて応戦体勢でいたことはすっかりバレていたらしかった。


園田とのことを心配する彼に『大丈夫です』と答えたところ、大体お前は危機感がない、とご指摘を受けそこから説教へと繋がった。



「……危機感、持ってるつもりなんですけど」


だからこその、握り拳なのであって。
だが、私の反論は許されない。



「拳で殴って、それから?」
「え」

「逆上した男から、走って逃げられるつもりでいるのか」
「……す、すみません」


確かにその通りだけど、だけども!
一発殴ってやりたいくらいの感情が私の中にあることを、彼だってわかっているはずじゃないのか。


言いたいことは色々あるけれど、大人しくしているのはここがまだ、ベッドの上で。
説教も咎めるような言葉も全部、彼の腕の中で行われているからだ。


ぐったりと身体を横たえた私を背後から抱きしめ、私の肩や首筋にキスを落としながらのもので。
うっかり逆らって、気怠い身体を慰めるキスが、またしても欲情を呼び起こすものに変わってはたまらない。

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