エリート上司の甘い誘惑
そして週明けの月曜だ。
夜通しどころか、土日フル活用しての二人の時間のせいで、私は筋肉痛で軋む身体を引きずっての出勤となった。
こんな恥ずかしい理由で筋肉痛になるとか、ほんと、絶対、誰にも言えない。
オフモードで200パーセント越えの糖度を発揮した部長には、一度はっきり主張したいと思う。
糖度は50パーセントほどがちょうどいいのだと。
しかしだ。
筋肉痛は私が顔に出さなければバレないわけで、問題は別なところにある。
忘年会後、皆の前で部長と共に抜けたのだ、きっと二人揃ってニヤニヤという視線を受けるに違いない。
そう思い、覚悟してオフィスに入ると、まあやっぱり当然だが皆ニヤニヤしていた。
「おはようございます」
「おはよー」
「ニヤニヤうるさい」
「何も言ってないじゃないー」
にやにやの筆頭は当然望美である。
だがしかし、その後出勤した部長には、みんな誰一人ニヤニヤ笑いを向けなかった。
なんでだ!
ずるい!
一人だけ何もなかったかのように、平然といつも通りの仕事モードだった。
確かに……仕事中の部長にニヤニヤを向けたところで冷ややかにスルーされるだけなのだろうから、私に集中するのは考えてみれば当然だ。迂闊だった。
そしてもう一つ、一番気掛かりだったのは、東屋くんだった。
彼はやっぱりいつも通りだったけれど、それが逆に、私にどんな顔をすればいいのか迷わせた。
「ひどい。ひどいですよ、さよさん、俺と打ち上げ行くって約束……」
「いやしてないよね」
「相手が悪かったって。東屋くんかわいそーに」
味方につけた周囲に慰められてわざとらしく落ち込む姿に、私は悩んだ挙句。
ぷい、とこちらもわざとらしく、素っ気なくした。
多分、これで正解なのだ。
折角彼が、冗談で流れるように、私が気に病まないようにと作ってくれた空気なのだと思うから。